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「すみません。此方を見て欲しいのですが」 萠が懐から懐紙に包んだ真珠を出して見せる。 「ほな、失礼」 店主は真珠を受け取り、チラリと見ると 「此は家ではよう扱いまへん。どうしても言わはるんなら、五百文でどないでっしゃろ」 貨幣価値が分からず、山南をチラリと見る萠。 「そうですか。中々手に入る大きさの品物ではないのでね。また来ますよ」 質屋を出て山南がポツリと、 「もう少し値がついても良いと思うんですよ。真珠は咳や滋養にも良いので労咳に良いとされてますからね。薬問屋の方が良いかも知れませんね」 萠は真珠が薬とされていた事は知っていたが、労咳に良いとされていた事までは知らず驚いた。 「そうなんですか。労咳は不治の病でしたものね」 「と、言うことは、先の世では治るのですか?」 「はい。薬で治ります」
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