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煙管の煙が充満する和室で文机の前に座り、筆を握る男が一人。 男の右横に敷かれた布団に女が横たわり、その傍に総髪を高く結った青年が一人座って居る。 「この方、いつ目覚めるんでしょうね。そろそろ危ないですよね?」 青年の言葉に、男は女の顔に視線を向ける。 女が此処に運ばれて来て、早五日。真綿に水を含ませて僅かながらに飲ませてはいるものの、到底足りないらしくふっくらと形の良い唇は乾き血の気も失せていた。 五日前のそろそろ夜四になろうとしている頃。 男の部屋に向かう急くような足音が聞こえると障子越しに声がした。 「土方さん、手が塞がっているんです。ちょっと開けて下さいよ」 「総司か、もっと静かに歩きやがれ。休もうとしている奴らもいるんだぞ」 土方はやおら立ち上がると障子を開け、総司の手を塞いでいる物を見て眉をしかめた。 「なんだそら」 「なんだはないでしょう。女子ですよ」 「そりゃ見ればわかる。異人か?」 「どうなんでしょうね? 着ている物を見ればそうなんでしょうけど。って、この方、刺されてるんですよ。早くしないと死んじゃいます」 土方は至極嫌そうに自身の布団を敷くと、目線だけで総司を促し、おもむろに寝かされた女の着ている物に手を掛けた。 しかし如何せん異人の着るもの等どう脱がせば良いか分からない。土方は力ませに布を引き裂いた。 「何してるんですか!」 バッと背を向けて女から視線を外した総司に、 「取り敢えず焼酎と晒し持って来い」 と言い捨てて傷の具合を見る。 傷は左脇腹をやや左斜め前方から一突きされたモノで、背中にまで達していた。
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