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「総司、何処で拾った」 「藤堂屋敷近くです。それじゃひとっ走り行ってきます。直に一君も来ると思うので、詳しくは一君に聞いて下さい」 駆け出して行った総司の足音を聞きながら、土方は大きく息を吐いた。 土方ら新撰組は京の街の嫌われ者だ。 藤堂屋敷はそう言う土方らが住む壬生村の新撰組屯所から、目と鼻の先ほどしか離れていない。そんな場所で異人が斬られたとなれば、どんな言いがかりをつけられてもおかしくはない。 京都守護職、会津潘松平容保公より、京都市中見回りの任を頂いている事を考えると、真っ先に迷惑をかけるのはその松平容保公である。 そうなれば自分たちの処遇がどうなるかも定かではない。 最悪は捕縛の上、斬首。良くても切腹。 農民出の土方らが漸く掴んだ出世の夢も儚く散りかねない。 土方は手のひらから溢れ落ちそうな夢を繋ぐように、女の出血を止める為、晒しを女の胴にきつく巻き付けた。 「副長、失礼します」 「おう、入れ」 大柄な斎藤一がそれ以上大きな男を俵担ぎにして運んで来た。 が、土方の部屋に一歩踏み入れた所で立ち止まると視線を泳がせる。 「どうした。降ろせ」 「副長、すみませんが些か目のやり場に困ります」 そう言われ斎藤の視線を辿れば、女の剥き出しの乳房に行き着く。 晒しを巻いて、そのまま放置していたのだ。 「清童でもあるまいし」 土方は自身が引き裂いてボロ布になってしまった女の服を、女の胸元に掛ける。 「まあ、ちょっと見ないくらいの体なのは間違いねぇか」
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