双子協奏曲

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 ここの天文台は北館と南館の二つに分かれていて、北館をメインと使っている。その理由は北館が新しく出来た建物で大きいということと、こちらに最新式の天体望遠鏡が備え付けられているというのがあった。  だから天翔の研究室も北館にある。北館へと入ってみて、ふといつもと違って静かなことに気づく。 「あ、今日は月曜日か。一般客を相手にするところは休みなんだな」  観測の関係で夜通しいることもあるため、どうにも日付感覚がおかしくなる時がある。おかげで一般開放の休業日も、日々通り抜けている土産物店の準備状況で解るという有様だ。いつもならばいる店員がいない。それが天翔の生活での大きな変化というわけだ。 「道も空いてましたよね。ちょっと下のキャンプ場はお盆休みも近いからか、ここ最近は客が多くて渋滞する時もありますよ」  また立ち止まってしまった天翔に、煙草を吸い終えた駆は声を掛けた。煙草の臭いを払うように服をパタパタと叩きながら笑う。研究の関係で朝早くから来て夜遅くに帰る天翔は気づいていないが、夏休みとあって付近は一般客だらけの日が続いていたのだ。 「そうなのか。じゃあ今日は珍しく静かな日って感じか」  ふうんと、人のいない土産物店以上には何とも思えない天翔だった。天文台の周辺が公園として整備され、より天文台を訪れやすいようになっているのは知っているが、普段は気に留めないのだ。公園が山の下の方にあり、普段から目にしないというのも理由になっているだろう。
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