双子協奏曲

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「相変わらず遊びのない奴だな。褒められた時は素直に喜んでおけばいいんだよ。君がちゃんと次を見据えていることくらい解っている」  朝から堅苦しい話をしてすまなかったなと、恭輔は立ち上がると天翔の肩をぽんっと叩いた。あまり気持ちを張り詰め過ぎていると躓いた時に立ち直れなくなるぞと心配することも忘れない。 「はい」  そんな気遣いに、天翔は畏まったままであるもののしっかりと頷いた。この人の下で研究していてよかったと実感もする。それに恭輔も良しと頷いた。  そしてそのまま出て行くのかと思いきや、恭輔は辺りをきょろきょろと見渡す。その様子は今から拙い話をするぞと言っているようなものだ。 「それはそうと、ちょっと聞きたいことがあるんだが」  そして声を潜めてそう言った。これは何やらただならぬ雰囲気を感じる。天翔は自然と表情を引き締めた。 「あの、俺は外しましょうか」  その空気に駆は自分がいない方がいいのではと出て行こうとした。二人の間で処理すべき問題かもしれない。 「いや、君からも意見を聞きたい。というのは、講師を務めている坂井君のことなんだ」  その名前に二人は思わず、ああと声を漏らしていた。坂井恵介は天文学者としては十分な実力を持っていて、講師としては何一つ問題ないのだが、厄介な一面を抱えていた。
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