双子協奏曲

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 そうなった時、いわば恭輔の弟子にあたる天翔が自分を追い越していいポストに就くのではないか。もしくは自分を追い出して講師のポストに納まるのではないか。そんな懸念を恵介は抱いている。それは天翔としても問題となっていることで、次に関して考える場合、恭輔を頼るべきか否かは避けられないものだ。 「お前が気にしないと言うならば俺があれこれ言える立場にはないが、島田から見てどうなんだ。よく一緒にいるならば何か感じることはあるだろう」  それは駆に対して恵介が間接的な嫌がらせをしていないか。そう確認する問いである。たしかに不快に感じることがないでもないが、我慢できる範囲であった。 「まあ、困っているほどじゃないですよ」  天翔が苦情を申し立てていないのに自分が言うわけにもいかない。何とも微妙な力関係が透けて見える事態になってしまった。それに気づいた恭輔はすまないと謝る。 「いえ、心配してくださってありがとうございます」  ついに恭輔が解決に乗り出そうと考えるほどか。天翔はのんびりしていられないなとの気持ちになる。次が見つからなければ研究を続けられないのだ。それだけは避けなければならない。が、安易な方法は後々の禍根となりかねない。それを今のやり取りでよく理解した。 「まあ、困るようなことがあったらいつでも言ってくれ」  この場で何らかの解決が出来るわけでもなく、そして天翔の本音を引き出せるものでもなかった。 「引き続き恒星の輪に関して研究していくということだな。解った」
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