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淀んでしまった空気を振り払うように恭輔はそう言うと、今度は素直に研究室を出て行った。
「何だか妙に疲れる朝ですね」
「ああ」
静かな珍しい朝は、こうして波乱含みで始まったのだった。
「やっぱりないか」
何とか悠大を研究室から追い出した後、机の中からあらゆる書類の間まで隈なく捜索してみたものの、定期入れは一向に出て来ない。これは完全にどこかで落としている。
「問題はどこでってことなんだよ。ううん」
捜索を諦めてパソコンの電源を入れつつ、龍翔はどうしたものかと思案する。定期はすぐに解る手前のビニールの部分に入っている。普通はその定期を確認したら中を見ようとは思わないだろう。定期入れの中にごちゃごちゃと何かを入れている奴なんて少ない。
「でもな」
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