双子協奏曲

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「おはようございます」  そんなことをつらつら考えていたら、まだ来ていなかった二人が揃って現れた。週末に何かやっていたのか、二人とも寝不足という雰囲気を漂わせている。普段から仲がいいから揃って遊んでいたのかもしれない。研究には息抜きも大切だ。 「おはよう」  龍翔は挨拶を返しつつ、どう切り出そうかと悩み始めた。もう定期入れのことは頭から飛んでいる。目の前の問題の方が大事だ。というよりも難題だ。 「先生。あの、何か用事ですか?」  が、大事だと思い過ぎてじっと颯太を見つめてしまっていた。その鋭い目に、颯太はびくびくしながら声を掛けてくる。 「あ。この間から進めていた宇宙モデル、あれは他大学と共同でスパコンによるシミュレーションに入るよ」  まずは良い知らせからだよなと、龍翔は自分の失敗にどぎまぎしつつも笑顔をキープした。朝からよく顔面の神経を使うことだ。明日、筋肉痛にならなければいいがと余計な心配まで浮かぶ。 「そうですか。じゃあ式の最終的な詰めをするというわけですね」 「うん、まあね。で、同時に進めているのがあるだろ?」  神妙な面持ちで聞く颯太に、笑顔をキープしたまま話す龍翔。かなり奇妙な状態だ。当然、聖哉は何をやっているんだとの目で二人を見ていた。 「それ、やらせてもらえるんですか?」  しかし、この奇妙な展開がこの一言で好転することとなった。颯太は意気込んで龍翔の机に一層近づく。
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