双子協奏曲

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「そ、そう。やってくれるか?」 「もちろんですよ。研究成果を出す。これがポスドクの本分ですから」  なるほど、そういう捉え方もあった。やる気漲る颯太を見て、自分も数年前は成果を早く出さなければと焦っていたことを思い出す。特に任期付きのポスドクは大変なのだ。次の仕事に繋げるための成果を求め、日々努力しなければならない。龍翔は図らずも颯太にいいことをしたわけである。 「じゃあ、よろしく。解らないことがあったら、いつでも聞いてくれていいから」  はあ良かったと、難関をクリアした気分だ。ごそごそと確認のために机の上に広げていた資料を掻き集め、それを丸ごと颯太に渡す。 「解りました」  颯太は元気よく返事をすると、さっさと自分の机にその資料を持ち帰った。さっきまでの疲れたような顔から一転、晴れやかなものに変わっている。それに対して聖哉もよかったなと肩を叩いている。どうやら研究成果が出せないのではということが悩みとなっていたらしい。全然気づかなかったとは致命的だ。 「ううん。今までの方針が間違っていたのか」  その反応は龍翔に新たな悩みをもたらした。人を雇うというのは思う以上に難しく責任のあるものである。この出来事を教訓として覚えておかなければなと、龍翔は気持ちを引き締めた。 「先生。新崎先生からお電話です」  悩んでいたら千佳が電話だと大きな声で知らせてくれる。新崎とは二つ向こうに研究室を構える新崎智史だ。こいつも同い年という、大学として採用に偏りがないかと思う状況が気になるが、ともかく研究分野は違うもののいいライバルのような奴だ。 「電話ねえ。直接来いよ」  しかし実際に文句があるのはこれだ。歩いて三分も掛からない距離だというのに電話してくる。これは如何なものだろう。ひょっとして足を骨折でもしたのか。
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