双子協奏曲

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 ここで多くの人は宇宙論とかいう宇宙関連の研究をやっている物理学者って何だとなるだろう。そいつらも天文学者じゃないのかと思うに違いない。  最近では物理学の一分野である宇宙論も観測の精度が上がったことにより天文学とみなされやすい。しかし両者は重なり合うというだけで別なのだ。言うなれば天体や銀河の成り立ちを専門とするのが天文学、それとは異なり宇宙の時空を考えたり構成される物質について考えるのが物理学だ。ちなみに時空を考えるのが宇宙論で、物質に関しては素粒子物理学の分野に当たる。  だから宇宙からやってきた素粒子の一つであるニュートリノを観測してノーベル賞を取った、小柴昌俊氏や梶田隆章氏は物理学科出身なのだ。 「そんなものに入れてたんですか。お土産物ってことはビニール製ですよね」  千佳は思わず眉を顰めていた。というのも、千佳の中で土産物の定期入れといえば、水色やピンクのビニールで出来た、子供が持つようなヤツだった。だから驚くというより呆れてしまう。いくら貰い物とはいえ三十過ぎた男がそのチョイスはないだろう。そこは自分で別のものを用意するはずだ。 「いや、一応は革っぽい作りのヤツで、星の柄って言っても小さく彫り込んである感じだぞ」  どういうものを想像しているんだと、自分の持っているものとかけ離れたものを言われて龍翔は驚き返すことになる。なるほど、土産物と言ってもピンからキリまであるわけだ。 「あ、いわゆる合成皮革ってヤツですか。それならまだ理解できます」  千佳はほっとしてしまう。これで本当にビニール製を愛用していると告白されたらぶん殴っているところだった。そこに理由は存在しない。
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