交差の地にて

1/1
前へ
/23ページ
次へ

交差の地にて

姫は、幼い頃。 交差の中心で、一人の旅商人と出逢った。 東西を繋ぐ街道と、南へ伸びる街道。 二つの道が交わる。 交差の中心に在る糸魚川藩は、藩が出来る遥か昔から、 交通の要所、軍事の要、宿場町として成り立っており、 人々の往来が多い。 交流で栄えた場所が、やがて藩に成った、に過ぎない。 財政難、解決の糸口を見出そうと、 藩では、行商人や旅人からも、多様な意見を求めていた。 立地上、糸魚川は幕府の本拠地である江戸と、離れている。 お陰で、こうして自由な采配が振るえる。 諸藩を取り締まりたい幕府の監視、法や思惑、 しきたりが、及びにくい。届きにくい土地であり。 大っぴらには出来ないが、藩独自の裁量で、物事をコッソリと推し進めたり、 決められる節もあった。 しかし、逆を言うと。 民も、各々の裁量で、藩や幕府に抵抗できる自由度が在る。 先の一揆も、続く一揆も、止むに止まれぬ事情がある。 民側の方策の一つだった。 とはいえ。それ程までに、藩と民は、切迫している。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加