ひかりのなかで

1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ひかりのなかで

あきほはきれいなひかりのなかをさまよっていました。 あたたかなオレンジときいろいひかりがまざりあっており、きれいです。 「ここはどこだろう」 あきほはばしょのきれいさとやすらぎをかんじるよりもさきに、ふあんをいだきました。 このばしょにくるまでは、しゅじゅつしつにはこばれたからです。 あきほはおもいびょうきで、しゅじゅつをうけないとたすからないびょうきにかかっていました。 あきほのりょうしんや、びょうきをなおすおいしゃさんもいません。 「あきほちゃん」 ひかりのなかに、ききおぼえのあるこえがしました。 あきほはこえがしたほうをみると、そこにはにねんまえになくなったおばあちゃんがたっていました。 「おばあちゃん!」 あきほはおばあちゃんのもとへはしっていきました。 おばあちゃんはあきほのからだをやさしくだきしめてきました。おばあちゃんのぬくもりがつたわってきました。 「おばあちゃん、ここはどこなの?」 あきほのおばあちゃんにききました。 「ここはね、せいとしのはざまのなの」 「せいと……?」 むずかしいことばに、あきほはくびをかしげました。 「ごめんね、ちょっとむずかしかったね、あきほちゃんはいまあぶないじょうたいにいるんだよ」 おばあちゃんはいいました。 「おばあちゃんはあきほちゃんをたすけにきたの」 「たすけに?」 「そうだよ、このままさきにすすむとあきほちゃんはしんじゃうからね」 おばあちゃんのことばが、あきほにはずしりとおもくかんじました。  あきほのびょうきは、しゅじゅつすればなおるとりょうしんからいいきかされてはいましたが、しぬとまではおもってはいませんでした。  あきほのあたまのなかにはりょうしんのおもいでがよぎりました。 さんにんでしょくじをしたり、ピクニックやゆうえんちにいったりと、どれもたのしいおもいでばかりです。 あきほはりょうしんがすきでしたし、じぶんがしんだらりょうしんとはあえなくなるのはかなしいです。 「わたし……まだしにたくない」 あきほはめになみだをためていいました。 「だいじょうぶ、おばあちゃんがあきほちゃんをもとのせかいにかえしてあげるから」 おばあちゃんはあきほをなだめるようにいいました。 「ほんと?」 「ほんとうだよ、さあ、おばあちゃんといっしょにあるこう」 「うん」 あきほはすこしだけげんきになりました。 あきほはおばあちゃんとてをつなぎ、もときたみちをあるきだしました。   おばあちゃんとあるいていると、おばあちゃんといっしょにさんぽしたことをおもいだしてきました。 「……おばあちゃんはおぼえてるかな」 「なあに?」 「わたしとさんぽしたときに、おばあちゃんにリボンのヘアゴムかってくれたよね」 あきほはなつかしそうにいいました。あきほがごさいのときでした。 「ああ……おぼえてるよ、あきほちゃんがおばあちゃんちにあそびにくるたびにしていたねぇ」 「いまでもたいせつにとってあるんだ」 あきほはいいました。 おばあちゃんがなくなってからは、おばあちゃんのことをおもいだしてしまい、リボンのヘアゴムはしていませんが、あきほのたからばこのなかにしまっています。 「それはうれしいねぇ」 おばあちゃんはにこやかにわらいました。あきほがいちばんすきなかおです。 あきほもつられてわらいました。 それからも、あきほはおばあちゃんといろんなはなしをしました。えのコンクールでしょうをとったこと、あたらしいともだちができたこと、びょういんのかんごしさんにしんせつにしてもらったことでしょうらいはかんごしさんになりたいなどです。  おばあちゃんはあきほのはなしをきいてたのしそうでした。 ふたりがあるきはじめてからだいぶたったころでした。まっしろなひかりがめのまえにひろがっているばしょにつきました。 「さあ、ここからはひとりでかえるんだよ」 おばあちゃんはそっとあきほのてをはなしたした。 「おばあちゃん……」 「いっておとうさんとおかあさんをあんしんさせなさい、おばあちゃんはあきほちゃんをみまもってるから」 おばあちゃんはいいました。 あきほのこころにはさみしさがわきあがりました。まだおばあちゃんといっしょにいたいのです。 しかしあきほのりょうしんをかなしませるわけにはいきません。 「……わかったよ、じゃあね、おばあちゃん」 あきほはてをふりました。おばあちゃんもてをふりかえしました。 「しっかりいきるんだよ」 おばあちゃんはあきほをはげましました。そのことばをさいごに、あきほはしろいひかりのなかにあしをふみいれました。 あきほのいしきはそこでとだえました。 つぎにめがさめたときには、りょうしんのかおがありました。 「あきほ……」 おかあさんはめになみだをためていました。 「おかあ……さん?」 「あきほ……よかった……」 おかあさんはあきほをだきしめました。そばにいたおとうさんはあんしんしたかおつきになり、はなしはじめました。  あきほはしゅじゅつしつちゅうにあぶないじょうたいになり、おいしゃさんがけんめいにあきほのいのちをたすけるためにがんばったそうです。  そのおかげで、あきほはいちめいをとりとめたものの、にしゅうかんほどねむったままになっていたそうです。 「そんなことになってたんだ……」 あきほはいいました。 おかあさんはあきほからゆっくりとはなれ、めにたまったなみだをふきました。 「おとうさん、おかあさん……あのね」 あきほはりょうしんに、ゆめのなかでおばあちゃんにあったことをつたえました。 りょうしんはあきほのはなしをだまってきいていました。はなしがおわるとさいしょにくちをひらいたのはおかあさんでした。 「きっとおばあちゃんがあきほをまもってくれたのね」 おかあさんはいいました。 「わたしもそう思う」 あきほはいいました。 それからあきほはいっしゅうかんのにゅういんをへてたいいんしました。 あきほはじたくにかえってきてさいしょにやったのはおばあちゃんのぶつだんにきててをあわせることでした。 たかばこにしまったおばあちゃんがかってくれたリボンのヘアゴムをぶつだんにおきました。 「おばあちゃん、わたしをたすけてくれてありがとう」 あきほはぶつだんにおいてあるおばあちゃんのしゃしんにおれいをいいました。 「わたし、おばあちゃんのぶんもせいいっぱいいきるよ」 あきほはじぶんのいのちをたいせつにしようとおもいました。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!