<第三章:旅立ち>

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<第三章:旅立ち>

「まだ見つからぬのか」ブリアトーレは、苛立っていた。 「は、この市中には地下に抜け道の類が張り巡らされている様子でして・・・陛下にはご存じなかったのですか」 「そんな物知らぬわ。そうだ、アウロスを締め上げて吐かせろ」 「恐れながら既にそうさせていただいております。が、かの者もさすがに司祭長までつとめた男。容易には吐きませぬ」 「葬儀まで時間がないのだ。何とか今夜中に捕らえられぬものか・・・」  北の塔から忽然と姿を消したリシア=ブライスの行方はまだ掴めていない。  すでに一週間近くが経過し、明日は先王の葬儀の日だった。  それ以外では、ブリアトーレの陰謀は着々と進行している。  長女のライラ=ブライアンも、四日程で遂に陥落し、次女のリトニア=ブリトニーはすでにほとんど身も心も女になって、侍女のミリアによってとりあえず人前に出しても恥ずかしくないだけの王女らしい仕草やマナーを叩き込まれている。  明日の葬儀には、二人とも揃って国民の前にその姿を見せさせる段取りになっていた。  そして、ライラ姫のアルゴニアへの輿入れも明らかにするのだ。  しかし、ブリアトーレにとっては三人揃わないことには都合が悪い。三人ともすでに国王の資格のないことを国民や先王派に思い知らせてやるのだ。 「もし見つからなくば、誰か身代わりを仕立てさせてでも三人揃えるのだ。所詮間近で顔を見られるわけではあるまいし、ただでさえ男から女に変わったのだ。分かるまい」 「さよう。しかしそれがまたリシア姫の捜索の支障になっているわけでして・・・」ナイは苦々しく言った。 「各国の使者の方はどうか」 「アルゴニアを始め各国から弔問の使者が参っております。アルゴニアが陛下に対する支持を掲げてくれたお陰で表立って今回の王位継承について異議を唱える国はありませぬ」 「そうか。あとは時間が経つのを待つだけだ。そのうち誰もが余の天下を既成事実として受け入れるようになる」 「そうでございますな、フォッフォッフォ」
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