<第三章:旅立ち>

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「ブライトン二世陛下に永遠の安らぎが得られぬことを」  先王の棺を乗せた車を中心とした葬列が続いていく。  葬列は神殿まで進み、そこで王家代々の地下墓地に埋葬される。  多くの国民が先王の死を悼み、葬列を見送っていた。 「新国王、ブリアトーレ陛下!」  先触れが読み上げる声に続いてブリアトーレの乗った馬車が現れると、民衆の悲しみの声は、怒りの沈黙に変わった。  この一週間、不敬罪で投獄された者は数知れず、市内の警備も厳重になりこそすれ緩むことはなかった。  従って、ここでブリアトーレに罵声を浴びせるような者は、すでにいなくなっている。  しかし、国民のブリアトーレに対する怒りは、収まらなかった。  その怒りの沈黙が、悲痛なうめき声に変わっていく。 「ブライトン二世陛下ご息女、第一王女ライラ殿下!」 「同じく第二王女リトニア殿下!」 「同じく第三王女リシア殿下!」  三人は確かに美しかった。しかしその美しい姿がなおさら王子達の変わり果てた様を強調し、民衆の哀情を誘った。 (・・・・・) (王子殿下方に、なんてことを・・・) (あの凛々しいブライアン殿下が、あのようなお姿に・・・) (ブリトニー殿下、ブライス殿下まで・・・) (あれが本当に、王子様達なのか・・・)  民衆の悲痛な声をよそに、王女達の乗った馬車は通り過ぎていく。  それに続いて、各国の弔問団の馬車が通過していった。 「ほほう、あれが私だって」 「で、いやリリス様、声が大きいですよ」 「兄上方は・・・・」  ブライスは遠くから、兄たちの馬車を眺めて言った。  遠くから見ても、兄たちいや今では姉たちの様子が以前とは違い覇気がないのがよくわかる。まるで美しいだけの人形のようだ。 「はい。今ではお二人ともほとんどナイとブリアトーレの言いなりとのことです」 「伯父上の人でなしが・・・・兄上、必ずや元に戻して差し上げます」  固く誓うブライスであった。 「リリス様、埋葬の儀のあと、何やら重大発表があるとか」 「なんだろう・・・よし、発表があるまで見ていこう」 「リリス様・・・」 「なに、あぶのうございます、か?実際今のところ誰も私の方を見る者さえいないではないか」 「それはそうでございますが」  グランツは、承伏しかねると言った表情でブライスを見る。 「本来なら私があの中にいて、父上を見送らなければならないのだから・・・」 「分かりました。お供いたします」  グランツは折れた。二人は神殿の方に向かった。
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