<第三章:旅立ち>

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「止まれ」  エストリアの都エスタシオの西のはずれに位置するサイデンの砦は、ブリトニーの居城であった。  現在は一時的にロウガンの麾下、ラズベルの指揮下にある。 「通行証と行き先を確認する」衛兵が二人を止める。  このサイデンの砦を通らなくてはエスタシオの西には出られない。  グランツが通行証を見せる。 「何、先王陛下の親衛隊に居ったのか」  彼が持っていた通行証は、彼の部下の物だった。 「左様。王が亡くなられてはそれがしの勉めも終わりました。しばらく諸国を放浪した上どこかでまたよい主君と出会えればよいかと・・・無事に葬儀も済んだことだし」 「そうか。実はそれがしもブリトニー殿下の部隊に居ったのだが・・・殿下があのようなことになられてやむを得ずここでこうしておる。それがしには家族があれば、そなたのように出奔するわけにも行かぬのでな・・・その娘は」 「我が姪にて、リリスと申します。それがしと共に、諸国を見て回りたいと」 「うーむ、本来ならば女は通してはならぬというお達しなのだが・・・書類も整っていることだし、お上の方も理由は教えてくれぬ。遠目には女に見えまいから、よかろう」 「これは忝ない。貴公の名を聞いておこう」 「俺はダン。だがこのことは内緒だぞ、俺も大公が王になったことはよく思っているわけではないからな」 「そうか、では」 「気をつけて参られよ」  衛兵は、快く彼らを送り出した。
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