<第三章:旅立ち>

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「いや、はなして!」 「フォッフォッフォ、もがくでない。そなたも我が暗黒の僕となるのだ」  ナイは、神殿の一部に新たに造り上げた祭壇に、女を運び上げた。 「われらが同志スールよ、我が心尽くしの生け贄を受けるがよい」 「ギャァァァァァ!」女が悲鳴を上げる。祭壇の回りを黒い霧状の物が覆い、女の身体から昇る白い何かを吸収していく。  女は目を見開いたまま、何度か痙攣すると動かなくなった。と同時に黒い霧も消滅した。 「フォッフォッフォ・・・今にこの神殿をつくりかえ、我らが居城としてやろうぞ」 (・・・・・)ナイは波動を感じた。 「無理をせずともよい、我が同志よ。いずれ復活の時まで、その力をとっておくのだ」  ナイはブリアトーレの許可の元、数日に一人の割合で若い女を神殿に連れてこさせていた。  それはもちろん、暗黒神スールに生け贄として与えるためである。  無論、ブリアトーレはそんなことを知る由もない。  彼は、その目的のためにブリアトーレに近付き、その兄に対する劣等感を煽り立てた。  その結果、事は彼の思った以上に順調に進んでいる。 「さあ、目覚めるのだ」  女は、のろのろと立ち上がった。その顔からは表情という物が全く消えている。 「お前は暗黒の僕になったのだ。我のためにこれからも尽くすが良い」  女は、ナイの前にひれ伏した。
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