<第四章:西へ>

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「まずは宰相閣下を救出せねばなるまいな」 「司祭長も宰相閣下も北の塔だそうだ。ちと厄介ではあるが」 「それより地方へ下り兵を挙げた方が良いのではないか」 「それはだめだ。我らには奴を追い払う大義名分がない」 「ブリトニー殿下かブライス殿下は」 「宰相閣下たちより難しかろう。どちらにしろ北の塔だ」 「ええい、北の塔北の塔、奴は何でも北の塔に放り込めばいいと思っているのか」 「奴にしてみれば当然の選択だろう。他に適当な監禁場所もあるまいし」 「グランツとルーンはどこへ消えたのだ」  エスタシオ市中のとある酒場の地下室・・・  アロンとラミレス。  つい先日までアロンはブライアンの、ラミレスはブリトニーのそれぞれ副官の任に在った者である。  この二人にグランツ、そしてブライスの副官であったルーンを加えた四人は、このエストリアきっての勇者であり、固く結ばれた友人どうしである。  評定の後、主立った重臣や将軍達は、自宅に事実上軟禁されていた。  その一方で、ブリアトーレは大公騎士団隊長であったロウガン将軍を総参謀長に任じ、その元でエストリア軍の再編を始めていた。  国王直属の親衛隊、各王子の直営部隊は解散させられ、希望する者はそのままブリアトーレの警護隊に編入され、その他の者は国境警備などの閑職に回された。そのまま退役した者も多い。  もちろん安穏に収まった訳ではないが、指揮官がいなくては彼らもどうにもならなかった。  ルーンを除く三人はブリアトーレに従うぐらいならと退役を希望し、グランツはどこへともなく行方をくらました。二人はほぼ毎日市内で飲んだくれていたが、ただ飲んだくれていたわけではない。機会あらばと、備えは欠かさなかった。 「せめて誰か将軍クラスを解放できればな」 「俺達が立てば民衆は立つぞ」 「しかし犠牲者も多くなろう」 「うう、畜生!くそいまいましい」 「とりあえず、王子殿下方の部隊にいた者たちに連絡がつけられるようにだけしておこう」 「俺達二人じゃどうにもならん、か」  今日も二人の方向は決まりそうにない。
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