あるクリスマスの女の話

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 帰宅時間の夕方五時になり、私は夜の予定もなくなったので、一人家でお酒を飲むことにした。 外はマフラーをしていても、やっぱり寒くて、こういう寒い日こそ、彼と一緒に過ごしたかったなと少し後悔した。 (…やっぱり会いたい、って言おうかな) そう思って、スマホを取り出そうとしたとき、向こうから一組のカップルが手をつないで楽しそうに歩いてきた。 その二人は、傍からみてもお似合いで、それを見て、やっぱり彼に会いたいと思った。 でも…、できなかった。 距離が近づくにつれて、遠くからじゃわからなかった顔と声がはっきりしてきて、どちらの顔も声も、私が一番見覚えのある人たちだったからだ。 ふと彼女と視線が合いそうになり、私はとっさに下を向いてしまった。 その後、二人は、私には目もくれずに、横を通り過ぎていった。 私は下を向いたまま、ショックでそこで立ち止まってしまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加