おみやげをあけたら

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初めてたどり着いた町は、森の中にありました。 もっさもっさとからだを揺らす木々。丸太をつみ重ねた家。木の上にできた遊び場。 みどりの草の向こうから、長い耳がひくひくと動いておじさんをうかがっていました。木々のあいだをかけっこする元気な風の音を聞きました。 おじさんはそれらを、スケッチブックに描きとめました。景色も動物も鳥も、初めて見る顔ばかりでした。 「どこから来たの?」 「となりの町だよ」 「どこへ行くの?」 「遠くへ行くんだ」 何があるの? 誰がいるの? 帰りもここを通ってね、と子どもたちは木になっていた果物をくれました。 「何をしに行くの?」 「遠くへ行くんです」 「遠くで何をするの?」 おじさんは首をかしげました。 大人たちも首をかしげました。 おじさんは手をふる子どもと、ひそひそ話をする大人に見送られて町を出ました。
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