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肌寒い秋の時期に私はひたすらに、走っていく。
どこまでも、この温く柔らかな場所を走っていく。
そもそも、私がここまで成長するまで、いくつの季節を過ごしたのかは覚えていない。
それでも、きまって待ち遠しいのは誰しもが、凍え縮こまる「冬」であった。
私たちの仲間の言い伝えに、とても面白いお話がある。
少し聞いてくださいますか? 今日も近くを通りかかる虫さん相手に同じ話をする。
「おや? 話し相手にならなれるかもよ」
せっせと巣を広げる働きアリさんたちが、十時の休憩時間に私の話を聞いてくれる。
ここ最近は、とても賑やかで常に楽しい音に包まれていた。
「ゴホンッ、昔々…。 寒い冬に空を舞う透明な妖精さんは自らに色が無いことを悔やんでおりました」
「それって、どんな妖精だい?」
一番前のアリさんが手を上げて私に質問をしてくる。
「それは、きっと雪の妖精さんよ。 私も見たことは無いけれど、ぜったいそうよ」
「冬は嫌いだなぁ」
アリさんたちは、寒い冬に備えいつも忙しそうに働いている。
ずっとここで黙っている生活だが、私の気持ちは季節を巡ることに上へ上へと向いていく。
「そんな妖精さんは、春や夏の妖精さんに尋ねました。 きみたちのように、色をもらうにはどうしたらいいんだい?」
クスクスと陽気に笑う妖精さんたちの態度に、雪の妖精さんは不機嫌になってしまう。 けれども、彼らはそんな妖精さんにある言葉を伝えました。
「お花さんにお願いしてみたら?」
「お花さん?」
「そう、きっと誰かが答えてくれるよ」
それを聞いた雪の妖精さんは、必死にお花さんにお願いしました。
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