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スカートめくり
慶太は思春期に入って女子生徒に興味を持ち始めた小学五年生。
或る昼休み、彼は桑の実でも食べてみようかと思って校庭の隅っこに生えている桑の木のところへ行ってみた。
すると、枝に留まって樹皮を齧って食べているゴマダラカミキリムシが目に留まった。
児童たちが遊び騒ぐ殷賑とした中でカリカリコリコリと樹皮を剥ぐ音が妙に耳に響いて来る。
そんな時、彼は孤独の深淵に陥ってしまうような少年だった。
その内、無意識にゴマダラカミキリムシを捕まえると、木陰に座り、それを地面に置いて人差し指で延々と突いていた。ところへ同級生で器量の良い青島朋美と同じく同級生で器量の悪い栗田澄江がやって来て慶太の背後から片方が声を掛けた。
「ねえ、今村くん、何してるの?」
慶太は青島朋美だ!と秘かにときめいて態と振り向きもしないで、「皆のいる喧騒を離れ独り自然を楽しんでるのさ」と気障ったらしく言った後、振り向きざま呟いた。
「カミキリムシ」
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