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「待った。もうやめよう!」  ハリムは落ち着いて、ホットケーキの材料がまだ残っていることを確認する。 「材料はまだいっぱいあるよ。だから……」  とハリムは、空腹の精霊が憐れに見えてきた。精霊の()()(ひび)割れた鏡だった。あれは捨てられたもの。精霊が空き地に来る前はどこにいたのかは知らないが、空き地に来てから美味しい食べ物に恵まれていないのかもしれない。 「もう、仕方がないな。今から僕とお前、二人で一緒にホットケーキを作って食べようじゃないか」  ハリムに化けている精霊は目をぱちくりさせた。そしてにっこり、笑みを浮かべる。  二人分のホットケーキを二人で協力して焼いていると、窓から蜜蜂(みつばち)がブーンと羽音を鳴らし入ってきた。蜜壷(みつつぼ)とメモ紙を持っている。ハリムはメモを手に取り読み上げた。 「この蜂蜜(はちみつ)をホットケーキに掛けてお食べ。母より……」  蜂蜜はハリムの母兎(ははうさぎ)が外出先で買って、家に届けさせたものだった。  ハリムと精霊の二人は蜂蜜を掛けたホットケーキを頬張る。それはふわふわで甘くて、最高の味。 「おいしい!」  精霊は喜ぶ。 「うん。ゆっくり味わって食べるのが一番だね」  ハリムも満足して頷く。 「ところでさ、お前はどこから来たの? 空き地に来る前は別の所にいたんだろー?」 「うん、うん、えっとね……」  二人は打ち解けて、会話は弾むのであった。 ◇ おしまい  
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