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「そうか。単に僕が映ってるわけじゃないのか。誰だよ、お前は?」
ハリムは負けん気が強い口調になる。驚かされて少し頭に来たのだ。
「わたしはこの鏡に棲む精霊だよ」
「え、精霊?」
ハリムは通っている学び舎で、精霊について粗方教わっている。精霊は一塊の火や水に霊子が取り憑いたもので、家具や衣類、装飾品などに潜む。個体差もあり、意思疎通が可能であったりなかったりする。
そして善悪の幅もある。
人に対して親切な者もいれば、そうでない者がいる。
この鏡に棲む精霊は、果たしてどちらだろうか。
「わたしの遊び相手になってくれない……?」
「な、何の遊びをするんだよ……?」
「そうだね。せっかく君の姿を写したんだから、君とわたしで入れ替えっこをしようか」
「入れ替わり? それってつまり……」
鏡の中の精霊が、僕に代わって僕の家に帰るわけか。
いつもの僕のように家で御飯を食べたりお風呂に入ったり、宿題もするの? そうなると僕の方はどこで何をするんだ。まさか鏡の中に入れってこと……?
ハリムはぞっとした。
僕と入れ替わりの遊びなんて出来ない。元に戻れなくなるかもしれないじゃないか。
ハリムは関わってはいけないものと口を交わしてしまったと怯えて、家に逃げ帰った。
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