扉の向こう

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トントン トントントン トン まただ。 今日は小雨が降っている。 でも、扉の窓硝子からは、優しい光が漏れている。 まもなく晴れるのだろうか。 トン トントン もう、わかったよ。 扉を開けるよ。 少しずつ 少しずつ、 扉を開ける。 見るからに重そうな扉は、私が手を掛けると、外側からの力で音もなく簡単に開いた。 『ずっと扉を開けてくれるのを待ってた。』 あなたは、扉を優しく叩いていた時と同じように、優しくそう言った。 そんなこと言って、皆のように、いつか私を見捨てるんでしょ。 だから、もう、誰も、何も要らないの。 私の世界は扉の中に閉ざされたままでいいの。
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