第八章 『またたきに』

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 こんな感情は、生まれて一度も持ったことがなかった。  光と一緒にいる時はただ嫌われないよう取り繕うばかりで、私は塩瀬さんにこんな感情を頂いていたのか……。  自分と一緒にいてほしい、自分だけを見ていてほしい。  こんな気持ちを持ってしまうのは、紛れもなく、私は塩瀬さんのことが好きなんだ。 「花火大会、一緒に見に行ったの覚えてますか?」 「あぁ、森川さんも一緒でしたね」 「春の花火って珍しいから、記憶に強く残っています」
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