第八章 『またたきに』

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 春の花火大会、塩瀬さんはみなみさんと来ていた。同僚の人も一緒だと言っていたけれど、みなみさんの特別な感情は薄々気付いていたのに、私は塩瀬さんのことをそこまで何とも思っていなかった。  あの時二人は、どんな会話をしたのだろう。一体どんな表情で、笑い合ったのだろう。 「なんか懐かしいなぁ。色々と思い出しますね」  ふふふ、と微笑む可愛らしいみなみさん。さっきあんなに光に容姿を褒めてもらえたのに、足元にも及ばない気がした。 「みなみ」  やがて奥から彼女の名前を呼んだ同年代の女性の元に、みなみさんは笑顔で手を振りながら去って行った。
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