第八章 『またたきに』

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「出会った時は、こんな感情になるとは思ってもみなかった」  風鈴のアーチの途中で足を止め、シャラシャラ音を発す風鈴の音は、きっとずっと忘れない。 「でも、一緒に時間を過ごしている中で、大好きになったよ」  自ら手に触れた私に、こっちを見てと言われ見上げた瞬間、塩瀬さんの唇が私の右頬に触れた。  驚きの余り一歩後ずさりすると、横を通り過ぎた老夫婦がクスクス笑っている。  若いわね、なんて言われた瞬間、私はジュッと顔が熱を帯びて急速に熱くなるを感じた。
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