第五札 えんかうんと!! =遭遇=

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第五札 えんかうんと!! =遭遇=

「ええと、面接の結果お二人に来てもらう事になりました」  後日。  結局俺は二名の採用を決定し、本日は顔合わせと  今後の流れについて打ち合わせをするべく再び館へ来てもらい  今こうして席に着いてもらっている。 「葉ノ上静流(はのうえしずる)さんと瀬堂流那(せどうりゅな)さん。これからもよろしく」 「宜しくお願い致します」 「はいっ!よろしくお願いしますっ!」  家事が出来るという事は勿論の事、瀬堂さんは性格が温和で純粋そうであった事。  葉ノ上さんは生真面目そうだが、防犯面でも頼れるという点が採用に至ったポイントだ。  他の面接者が胡散臭(うさんくさ)かった、問題外だったという事もあるんだが。  さて今後の話を進めていきたいのだが…… 「ええ、っと…ひとまずお渡しした書類を読んでもらえますか」 「はい」 「はいっ」 「……」  俺は二人が書類に目を通している間に葉ノ上さんを見る。  やっぱし腰回りが何かぼやけてる…。  サキに聞いたが仲間ではないとの事だったが  あいつの情報自体アテにしていいのか分からない。  この世界にある法術、やはりそれと関係ある事なんだろうか。 「読み終わりました」 「あっ……!す、すみませんっ……」  書類をカサ…とテーブルに置く葉ノ上さんに、  書類とにらめっこしたままの瀬堂さん。 「あぁ、ゆっくり読んでもらっていいですよ。  本当に大した事は書いてないんで」  そうなのだ。  雇用契約書って言うのか?契約に関する約束ごとなんて書いた事ないし  作った事ない。  全部スマホで色々調べてそれっぽい事を切り取り貼りつけしただけだ。  それからしばらくして 「お待たせしてごめんなさいっ!大丈夫です~っ…」  と瀬堂さんが顔を上げた。 「それじゃ、内容の確認と説明ですが……」  そう言って俺は言葉を切る。  やっぱり今聞いておこう。  後で聞いて問題が起きても困るし。 「その前に一つ質問、いいですかね?」  意を決した俺は葉ノ上さんに向き直る。 「はい、何でしょうか?」  葉ノ上さんの顔に緊張が生まれた…気がした。 「えっと、初めてあった時から思ってたって言うか」  何て言えばいいんだ?  葉ノ上さんの腰、ぼやけてますよねって?  彼女がそれについて気づいていなかったら怖がらせてしまうだろうか?  ここはもう少しやんわりと聞いてみるか。 「葉ノ上さんの事が気になっていたんです、けど…」  そう言った途端、場の雰囲気が急に変わった気がした。 「えっ」 「ふぇっ?」  葉ノ上さんと瀬堂さんが同時声を上げる。 「えっ?」  何で瀬堂さんも声をあげるの?  あ。  ―――初めて会った時から貴女の事が気になっていました―――  やべえ、これって告白みたいじゃんかよ。 「あ、いやそれは違――」  言い訳しようとしたその時――― 「いきなり家政婦さんに告白するな色情魔(ドエロ)ーーーっ!!!」  壁を突き抜けて飛来したサキが俺にドロップキックをかます。  が、もちろん当たる訳もなく俺をすり抜けるサキ。 「おまっ…!?」  サキの出現に驚く俺。 「きっ……」  引きつった顔で息を吸い込む瀬堂さん。 「!!」  険しい目で身構える葉ノ上さん。 「きゃああああああっっっ!!!」 「やはり!!!」  え?やはり? 「葉ノ……」  その疑問を口にするより早く。  瀬堂さんの叫び声と共に葉ノ上さんが腰元に手を添え、何かを破ったように見えた。  パンッ…!  電気がショートしたような音がしたかと思うと突然葉ノ上さんの腰元に黒い(さや)に収まった日本刀が現れる。 「えっ!!?」 「えぇっっ!!?」 「ふぇぇっ!?」  これには俺もサキも瀬堂さんも驚きの声を上げた。 「ひゃわわわわぁっ!」  バタバタ慌てながらサキは部屋から逃れようと壁に向かって飛んでいく。 「逃がしません!!」  シュラッ…と抜刀し、跳躍(ちょうやく)の構えを取る葉ノ上さんを見て俺は慌てて二人の間に割って入る。 「ま、待ってくれ葉ノ上さん!!」 「逢沢(おうさわ)さん!!下がって下さい!!」 「サキの事は誤解だ!だから刀を収めてくれ!!」 「いえ!誤解も何も……くっ…」  俺の背後を見て苦虫を噛み潰したような表情になる葉ノ上さん。  振り返るとサキは壁をすり抜け、どこかへ避難してしまっていた。 「……ふぅ…」  まさに一触即発。  サキが逃げてくれてよかった。  ってか出てくんなよ……。  室内に沈黙が続く。 「……突然の無礼な振る舞い、大変申し訳ありませんでした」  最初に沈黙を破ったのは葉ノ上さんだった。  スッと刀をしまい、無表情で一礼をする葉ノ上さん。 「いや……。色々と聞きたい事もあるし、聞きたい事もあると思う。時間、いいかな?」  俺の問いかけに葉ノ上さんは一度だけコクリと頷いた。 「ええっと、瀬堂さんも……」 「は、はいぃ……」  瀬堂さんはというと部屋の隅っこにしゃがみ込んで小さくなっていた。
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