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「なっ…何ですか?」
もしや聞かれてしまった?と慌てて笑顔を作り問いかける。
「は?」
「いえ…何でも、ないです」
ドキドキしながらそう言うと、どうやら勘違いだったと瞬時にパッと目を逸らした。
良かった…聞かれていたわけではなさそう。
でも、アホくさ…って言ってたよね?
そう思いながら、恐る恐るもう一度ちらっと後ろを振り返ってみた。
すると、次の瞬間。
「努力もしてねえくせに、金持ってる人間に幸せにしてもらおうって?他力本願以外の何ものでもないっていうか。本当、救いようのないバカだよな。見た目だけニコニコ綺麗に取り繕ってても、中身が腐ってる女って…ないわー」
無表情のまま低いトーンでペラペラと発せられた言葉に、血の気がサーっと引いていった。
私に、言ってる?
「まぁ、玉の輿だかなんだか勝手に乗りゃあいいけど、ひとつだけ教えておいてやるわ」
明らかに、私に言っている。
力強い目。真っ直ぐ突き刺さるような眼力に、何故か目をそらない。
「本当にココが賢い女は、誰が聞いてるかもわからないこんな場所で、ペラペラペラペラそんな話はしない。本当に賢い女ならな」
邪魔者Aはそう言いながら自分の頭を指差す。
要するに、おまえは頭が悪い。
彼はそう言いたいのだと理解した。
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