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千辛万苦
「あーっ、本当イライラする」
「もう、まだそんなこと言ってるの?」
照明の消えた暗い部屋で、千鶴のそんな声を聞きながらくしゃくしゃと頭をかいた。
「だって…思い出しただけで腹が立つだもん」
「はぁっ、苛立ってもしょうがないでしょ?もう会うこともないんだし、早く忘れて寝なってば」
疲れた千鶴の声に、ムカムカしていた心が少しだけ落ち着きを取り戻していく。
無理を言って連れて行ってもらったパーティー。
それだけでもありがたいのに、これ以上愚痴をこぼして千鶴を困らせてはいけないと気持ちを切り替える。
そうだ。あんなやつ、二度と会うこともない。
帰宅後、五十嵐社長に送ったメッセージも良い感じで返信があった。
早速来週には食事に行けることになったんだし、不快な今日の出来事なんて、きっとすぐに忘れられる。
僅かに残ったイライラを感じながらも、今日より明日、明日より未来だと自分に言い聞かせ眠りについた。
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