170人が本棚に入れています
本棚に追加
ピピピピ…。
鳴り響く目覚まし時計のアラーム音を、手探りでもぞもぞと止めた。
僅かに開いた瞼から見えるのは、八時ちょうどの時計の針。
それを見て、ふぅ…と安堵したのは、普段の起床時刻よりも一時間半も遅い時刻だったから。
そう、今日は日曜日。
忙しない仕事の日常から解放される、貴重な朝!なのだ。
眠りが足りない気もするし、このまま二度寝をかまそう…と、重い瞼をゆっくりと閉じる。
「…や、その前に」
ぱちっと開いた瞳が捉えたのは、枕元に置いていたスマホだった。
まだ眠い目をこすりながら、片手でぼーっと操作していく。
すると、目に止まったのはメッセージのお知らせが、三件。
すぐにそれを確認すると、昨夜五十嵐社長に送ったおやすみなさいのメッセージの返信なんだろう。
“おはよう”というスタンプを見て、ホッと一息つく。
だけど、あとの二件は…?
“昨日はありがとう。また連絡するね”
“織田です。覚えてるかな?”
よくわからないアイコン画像とharu、直樹、という名前。
昨日、千鶴の目を盗み数人の男性ともこっそり連絡先を交換していたけれど、正直誰なのかもピンとこない。
まぁ、超大物をゲット出来るんだし、こっちは返信しなくていいか。
そう思いながらスマホをぽんとベッドに置いた。
しかし、だ。
目覚めたばかりの頭に浮かぶのは、どういうわけか忘れきれていない昨夜の出来事で。
“見た目だけニコニコ綺麗に取り繕ってても、中身が腐ってる女って…ないわー”
邪魔者Aに言われたあの言葉が、一晩経った今でも私をまだ苛立たせていた。
最初のコメントを投稿しよう!