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「七香?」
天井を見つめたまま遠い記憶に思いを馳せていた時。
千鶴のその声で、ハッと我に返った。
「ん?」
そう言いながら寝返りをうつと、隣のベッドで同じように体を横に向けた千鶴が言う。
「大丈夫?」
「えっ?」
「なんか、久しぶりにそんな顔してるから」
心配そうな瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。
そんな顔って、どんな顔?
そう思ったけれど、千鶴には全てお見通しな気がして、黙って目を閉じた。
「千鶴。お腹すいた」
本当は別に、お腹なんて減っていない。
ただ、珍しく弱音を吐きそうで空気を変えたかった。
「はいはい、何か作るから待ってて」
ベッドから降りた千鶴の足音を聞きながら、キュッと唇を噛み締める。
なんだか無性に泣きそうになって、布団を頭までかぶった。
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