千辛万苦

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生まれ育った町は、広くはない小さな町で。 住んでいた家は、三人家族のわりにはそれなりに大きかった。 父は土建屋の自営業で、母は専業主婦。 一人娘だった私は、ずっと大切に育てられていたと思う。 だけどそんな幸せは、私が生まれてから十五年で突然ピリオドが打たれた。 中学三年の春。 大きな商業施設の建築工事を請け負うことになり、父は多額のお金を手にした。 様子がおかしくなり始めたのはその頃からで、仲の良かったはずの親の喧嘩が増えた。 夏になると、父は突然家を出て行った。 秋になると、離婚が決まったと母から聞かされた。 そして冬には、私と母が長年住んでいた家を追い出された。 それと同時期、私たちと入れ替わるように家に入ってきたのは、隣町に住んでいた女とその子供二人。 噂では女はスナックで働いていたらしく、その店に父が通っていたらしいけれど…簡潔に言うと、夜遊びを始めてすぐに不倫にハマった末、家庭を捨て、すぐに再婚。 新しい家族と暮らすため、私と母を家から追い出した。
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