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「ちょっと七香」
ぼーっと視線を彷徨わせていると、突然グッと腕を引かれ耳元で囁かれた。
「約束、忘れないでね」
その言葉に目を向けると、至近距離から幼馴染の千鶴(ちづる)がジロリと目で訴えてきた。
約束?あぁ…と、その言葉でここに来るまでに交わした会話を思い出す。
“ターゲットは絶対に一人だけよ?”
口酸っぱく言われた千鶴からの忠告。
こんなチャンスは滅多にないんだから別にいいじゃない、なんて不満に思ったけれど、そんなことを言って踵を返されても困るので言われた通りに約束をしてこのパーティー会場に連れて来てもらった。
「それは忘れてないけど…」
「けど?」
「さっきから優良物件が多過ぎて一人に絞りきれない」
小声でそう言うと、千鶴は呆れた表情で小さく息をついた。
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