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「わ、あの人カッコイイ!っていうか、どこかで見たことがあるような…」
呆れ顔の千鶴の隣で視線を彷徨わせながら再び品定めを開始した直後だった。
「あぁ、あの人はオリオンの五十嵐(いがらし)
社長ですよ」
ゆきちゃんのその声で、視線がピタリと静止する。
オリオンの、五十嵐社長…?
わ、まさかのあの、五十嵐 龍!?
動画配信サイト大手のオリオン。
そうだ、どこかで見たことがあると思ったら、以前テレビで見たことがあったんだ。
甘いルックスだし、女性ファンも多いとか言ってたな…。
「ゆきちゃん、五十嵐社長とお話しは出来るの?」
「はい、兄と仲も良いですし、良かったら紹介しましょうか?」
「ちょ、七香…いいの?」
「いいも何も、確定よ。ゆきちゃん、いきましょう」
「ちょっと七香」
心配そうな千鶴の声を聞きながらも、近くのテーブルに並んでいたシャンパングラスを二つ手にして一直線に歩みを進める。
視線の先には、五十嵐 龍。
交わした約束のもと、狙った獲物は彼に定めた。
距離を縮めながら、全身をチェックしていく。
両手共に、指輪なし。
腕時計は、おそらくフランクミュラー。
靴はグッチか。
スーツはアルマーニっぽいな。
三人で立ち話をするその姿を見つめながら、五十嵐社長の両サイドにも一応目をやった。
隣の二人もなくはないけど…やっぱり五十嵐社長一択だ。
ニコリと笑顔を作り、隣を歩いていたゆきちゃんの足が止まると一歩後ろに下がった。
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