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「五十嵐さん、お久しぶりです」
「あぁ!ゆきちゃん、来てたんだ?」
「はい、今日は大学時代の先輩とそのお友達も一緒なんです。あ、紹介しますね。こちら、七香さんです」
そう言いながら、ゆきちゃんがこちらを振り返った。
よし、いざ勝負!!!
「はじめま…」
「龍さん!」
しかし、自己紹介をしようとした、その時。
「おー!遅かったな」
「すいません、人身事故で電車止まってて」
「ははっ、お前らしいな」
五十嵐社長の視線は紹介されていた私ではなく、突然現れた邪魔者Aへと向き、続きを話すタイミングを完全に失ってしまった。
「とりあえず腹ペコなんです。飲む前になんか食べていいですか?」
「あぁ、食べろ食べろ。あっちのテーブルにビュッフェが並んでるから」
「あ、あそこですね。ちょっと行ってきます」
いきなり現れたかと思えば邪魔者Aはあっという間に料理が並ぶ方へと行ってしまう。
その後ろ姿をぽかんと見送りながら、あれはないわ…と重い息を吐いた。
電車に乗ってきたという邪魔者A。
顔を見ている余裕はなかったけれど、身長は高いしスタイルはかなり良い。
しかし、黒ジャケットに、無地の白T。
ジーンズに、スニーカー?
どこに目を向けてもスーツ姿の男性が揃いに揃っているのに、明らかに浮いている。
このパーティー会場にあんなファッションスタイルで来ている人…改めて見渡してみても、あの男だけだ。
あー、やだやだ。何の仕事をしてるかは知らないけれど、あれだけは絶対にない。
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