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「来たわよ、ついに玉の輿が」
「もう…まだ始まってもないじゃない。それに、五十嵐社長って絶対モテるよ?彼女とかいないの?」
「イケメン、有名社長、爽やかで優しい。そりゃあモテないわけないでしょ。彼女の一人や二人いるんじゃない?」
化粧室でのメイク直しを終え、千鶴と二人でパーティー会場に戻ろうと話をしながら歩いていた。
あんな人に女がいないわけがない。
寄ってくる女は山ほどいるはずだ。
「え、いてもいいわけ?」
「いいってわけじゃないけど。いたとしてもよ。五十嵐社長の一番の本命に成り上がって、結婚まで持っていければこっちのもんでしょ」
「あんたって女は…」
「ほら、結婚して最悪浮気されて離婚ってなっても財産分与があるし。だからその時はよろしく、千鶴弁護士」
そう口にすると、顔を歪ませた千鶴はわざとらしく寒気を感じたように自身の体をさする。
「七香のそのダークな部分、ある意味気持ちいいけど本当にゾッとするわ」
「でしょ?千鶴にしか見せてないから安心して」
「いや、そうしておいた方があんたのためよ。小悪魔っていうか、悪魔みたいだから」
「ははっ、悪魔でも何でも玉の輿に乗れたら何でもいいわ」
自分で言っておきながら、とんでもない女だと自分でも思う。
だけどこれは、心からの本音だ。
そしてその本音を口にできるのは、隣にいる千鶴の前だけ。
「まぁ…七香のことはいろいろ深く知ってるぶん、この際悪魔でも何でも…あんたがしたい様にすれば良いと思うけど」
「さすが、千鶴」
幼馴染で、昔から私のことをよく知る千鶴だからこそ、こんな性の悪い発言をしても見捨てずにそばに居てくれる。
それは多分、千鶴の前でだけは、数え切れないほどの涙を見せてきたからかもしれない。
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