藍の物語

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私が寂しく感じたのは、秋の所為(せい)だけではありません。こんな心地良い晴れのランチに、柵に囲まれた庭でたった1人。きっとその所為(せい)です。 お父様はたまにしか帰ってきません。帰ってくる時はだいたい夕刻。前触れなく玄関の幾つもの鍵が開く音がします。 お父様との夕食は貴重です。私は張り切って、腕によりをかけます。ですが、お父様との楽しいディナーもあっという間。もっとお話をしたいのに、お父様は書斎に籠ってしまいます。そして種々のお土産を置いて、朝食も食べずに出て行きます。 私はもっと、自分の手料理を食べてもらいたいのです。もっとお話しをして、人の声や表情に触れていたいのです。その相手はお父様でなくとも…。 私は、私の手料理を食べてもらいたい殿方がいます。その殿方とは、とある漫画で描かれている騎士様です。騎士様との出会いは私が10歳の時でした。一目惚れでした。 荒々しい性格ですが耽美な顔立ちで描かれているお方です。 不器用ながらお姫様を懸命にお守りする姿が魅力的で、(ページ)を捲る度、私はより一層心惹かれてゆきました。
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