藍の物語

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14歳になった今、その想いは募るばかり。私はその騎士様に会いたい。一緒にお食事をしたいのです。ええ、分かっています、騎士様は漫画、フィクションのお方です。幾ら想いを馳せようとも、お会いする事は叶いません。叶わぬ恋なのです。 分かっていても思ってしまいます。騎士様がお姫様を抱きしめるシーンを見ると、『私も抱きしめられたい、苦しいくらいに、痛いくらいに…』と。 私は寂しさを紛らわすため、お父様から授かった特別な力を使います。 この力を知ったのは私が6歳の時でした。 まだ幼い私は、お父様に言いました。 「お父様が聞かせてくれたお母様との旅、そこで巡った湖にわたしも行ってみたいわ。 写真や画集だけじゃつまらないもの、実際に行って見てみたい。お願いよ!」 せがむ私をお父様は哀しい瞳で見つめ、瞬きをしたと思うと、すっと笑顔に変わり私を諭しました。 「アイ、よくお聞き。想像するんだ。 靭く、深く、遠く、想い描くんだ。沢山の絵や写真を焼き付けて、色んな香りや味を吸い込んで、様々な音や言葉を刻み込んで、それらを頭の中で自由に組み合わせるんだ。 そしたら、何処にだって行ける。場所も、時間すらも越える」
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