藍の物語

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そう言って、お父様は私に特別な力を与えて下さいました。 アインシュタインという、御立派なお方も仰っています。「空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む」と教えてくれました。 私は秋空の下、騎士様と一緒にランチを楽しみました。心弾むひと時でした。私はこの庭に、私だけの世界を創ったのです。 ですが最近、悩ましいことに、この特別な力が衰萎してきた様なのです。 どんなに世界遺産や幻想風景を眺めに行っても、故人となった画家の生前に会いに行き、作画作業を見学させてもらっても、幼き頃のように興奮や幸福が続かないのです。 あっと言う間に、虚しいのです。哀しいのです。寂しいのです。 理由は分かっています。 この特別な力で行う、数々の世界旅行もタイムトラベルも、只の「空想」だからです。 いっそ、空想の世界から戻って来られないくらいに狂った空想家に成れたら良かったものの…私は案外、真っ当な人間でした。 生きて行く上では、空想は必要だと思います。押し寄せる得体の知れない不安や恐怖から心を守る為には、空想して、自分だけの世界を創り出すことも必要なのです。
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