愛の物語

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ベンチを目指して歩くお父様の跡を、わたしは銀杏並木に隠れながら追ったわ。何故、隠れるのかって?だって、もし見つかったりでもしたら、お父様はお母様ではなく、わたしに一目惚れしてしまうかもしれないんですもの。お父様はいつも言っています。「アイ、おまえはお母様に似て綺麗だ」と。 そうです。お父様はこの公園のベンチでお母様と出会って、一目惚れしたのです。 いつもは誰もいないベンチにお母様は座っていました。黄色い銀杏の葉がハラハラと舞い散る中、白いノーカラーコートを羽織ったお母様は、これまた白いふわふわのマフラーに口元を(うず)め、寂しそうな横顔で藍色の湖を眺めていたの。銀杏の葉よりも薄い色、けれども綺麗な金髪が靡くのをわたしは眺めたわ。 そんなお母様の横に座って、お父様はこう話しかけました。
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