おやすみ、またいつか

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 死に場所を探していた  自転車に二人乗りで、遠くへ遠くへと、アキラとヒヨリは走り続けている。  疲れたら交代して、東へ、東へ。  十二月の寒風も追い風にして、鼻歌交じりにアキラはペダルを踏む。 「なんだっけその歌」 「ボクも覚えてない」 「いいよねその歌」 「うん。東ってこっち?」 「太陽が昇る方!」 「だいたいこっち?」 「いやもう少し左?」 「こっち?」 「たぶん?」 「おっけー」  甚だ不安だが、二人は東を目指している。  世界は今、死の病に脅かされている。  眠るように死ぬ病。  原因も、治療法もわからない。だが確実に、世界の人口を減らしていった。  永眠病。いつしかそう呼ばれるようになった。  もう世界に人はわずかしか残っていない。世界最後の記録としては、世界人口は最大時の約三分の一弱、二十億人になったと発表されたが、すでに情報網は死に絶え、ネットどころか、電気すら死んでいる。  アキラとヒヨリも、ここまでで出会ったのは数人。その人たちも、もう眠ってしまったかもしれない。  それでも二人は楽しげに、今度は二人とも知ってる歌を歌いだす。  大きな声で歌っても、誰も何も言ってこない。  もう世界で起きてるのは、自分たちだけかもしれない。  そんな考えはワクワクもするが、同時に不安も頭を出してくる。  歌詞がわからず、わけのわからない言葉になって、二人で笑う。ただそれだけで、不安はまた寝かしつけられる。  二人なら、どこまでも行ける。二人とも、そう思っていた。
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