逢瀬

1/5
66人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

逢瀬

ようやく、休日が取れた。 早乙女明として自由に動けるぞ。 アカリの時はボブぐらいの髪の長さのウイッグを付けているから外すと短髪で、明らかに男になる。ファッションも久々に男物を着ているような気がするし、丁度いい機会だから服でも買いに行こうかな。 俺は、如何にもお洒落そうなセレクトショップに足を運んだ。 (あれ、あの髪型…背丈…まさか…!皇木クンか!?) マスクしていてもオーラというものが溢れて一般人っぽくないな。隠せていないんだよ。俺は早乙女明として足を運んでいるし、バレていないから無視しよう。自ら正体を晒しに行く馬鹿が何処に居るんだという話。 「お客様、お目が高いです。そちらのジージャン、一点ものですよ。でも、値下げしておりますので今がお買い得でございます。」 「あ、そ、そうなんですね。」 俺のいつも通りの声を一瞬、忘れかけた。危うく少し高めの女の声が出そうになった。 (皇木クンの動向が気になって何も入って来ない…って、何で俺は気にしているんだ。無視って今さっき決めたばかりだろうが!) 「お兄さん、綺麗な顔立ちしていますのでとても似合うと思いますよ?」 「ありがとうございます。」 この店員さん、凄く話しかけてくる!正直、面倒くさいね。芸術の良し悪しは俺が判断するのだから、勝手に自論を展開させれてもこっちが畏るだけだ。 「あの、すみません。」 「はい、どうなさいました、お客様。」 「こちらの服、在庫とかに他のサイズはありますかね?」 「ただ今、お調べしてきます。」 まさか、皇木クンから接近されるとは。全てはあの店員さんによって狂わされている。 「申し訳ございません。在庫はこれだけなんです。もし良ければ、注文が出来ますよ?」 「そうですか…ではお願いします。サイズはLサイズで。」 ファッションセンスはあるようだね。まあ、君がどんな服を着ていようが関係無いけど。それにしても何故、休みの日なのにこんなにハラハラしないといけないのかね。 (…忌々しいね。目もバッチリ合ってしまったし…芸能人って面倒だ。) 憂さ晴らしにカラオケでも行こうかな。フリータイムで歌ってストレスを発散してやろうかな。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!