熱量

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熱量

それから2回目のレッスン。 次で最後。勿論、いつだって気は抜けないし、次があるという甘えは禁物だ。 皇木クンも1回目より格段にレベルアップしてきた。あのライブ見学以来、会ってなかったけど、相当、鍛錬したようだ。 幾ら彼が発展途上とは言え、こちらとしても油断は禁物だね。 「今回は前回より格段に良くなったと思うわ。ハモリの部分も綺麗に響いているし、後は喉のケアをして次回もこの調子でやりましょうね♪」 「は、はい。」 皇木クンは褒められると分かりやすく喜ぶんだね。こんなに表情に出るタイプだったか? 「アカリさんの声も最高でした。」 「あ、ありがとう。ふふっ、真正面から褒められると照れ臭いけど、嬉しいわね。」 あくまでこれはビジネスだ。 お互いに仕事をもっと増やす為の。 それは双方の事務所が理解している筈だ。 それなのに…。 SNSのフォローしても良いかとか、聞いてきたし、その流れで連絡先も交換したし、あくまでビジネスを円滑に進める為の建前だけど、彼は何か違う気もする。 どちらにせよ、好感触ならばいい。 俺が、俺の芸術が世間に沢山、知られるならば、どんな人も自分が使いこなし、モノにする。 「あ、あのっ!」 「ん?何かあった?」 「いや…その!アカリさんのデモテープ聴いてもいいですか?もっと歌詞に対する理解を深めたいんです!」 「うん、構わないけど。熱心だね、皇木クン。でも…いや、好きに聞いてね。程々にしておきなよ?疲労は回復させないとね。」 「は、はい!アドバイス、ありがとうございます!お疲れ様でした!」 「うん、お疲れ様♪」 さっき、言いかけた。 俺がアカリとしてのアドバイスじゃなくて素直な、早乙女明としての本音が出そうだった。 寸止め出来て良かったよ。 何て言おうとしたのかって? そんなの…。 (…君がボクの声を聞いて歌詞に対する価値観が揺らがない意志があるなら良いよ…って言いたかったんだ。) 人の影響に及ぼされると自分のベストなパフォーマンスが出来なくなるからね。
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