12.

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恋しかった。 登下校の道で似た後ろ姿を見つけては、悲しくて苛立って。 校舎内のいたるところで北上との思い出がよみがえり、苦しくて切なくて。 この2年間は苦痛でしかなかった。 何度も、受け取った連絡先に電話をかけようと指先が動いた。 卒業を待たずに会いに行ってしまおうかと、焦燥感と不安に押しつぶされた。 でも、もう終わり。 あと数時間後には、北上に会える。 あの柔らかい眼差しに見つめられ、あの温もりを感じられる。 窓の外を流れる景色は次々に変わっていく。 どんどん彼のいる場所へと近づいていく。 会いたい。 早く、抱きしめたい。 *** 誰もいない、勤務先の高校。 もうすぐ17時の鐘が鳴る。 校舎内も正門も施錠され、入ることはできない。 「……はぁ」 本当に来るのかなんてわからない。 距離もだいぶ離れているし、本人からの連絡もない。 こうして学校の前に立ち尽くしていても、意味はないかもしれない。 今日の午後に、谷矢から『秋良が向かってる』と聞いたときは本当に嬉しかった。 疑っていたつもりはなく、ただ確信が持てなくて怖かったから。 ずっと、この時を待っていたから。 「今、どの辺りなんだろう……」 到着してなくても、現在地くらい教えてくれれば安心するのに。
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