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北上は目を見張る。
前触れもなく濁っていく視界。
「嘘って、何ですか」
「だ……って」
「ほら、立って。せんせい」
「あ、うん……っ」
しゃがんだままでいた北上に、相手は手を差し述べてくれた。
それに捕まるために伸ばしたこの手は、相変わらず小刻みに震えていて。
掴む直前で腕を持たれて引き上げられると、そのまま強く抱き締められた。
「迎えに来たよ。北上せんせい」
耳元で囁く声は、2年前より深みが増していて。
回された両腕や触れ合う胸板は、成長期を終えた大人らしい体躯へと変貌していた。
しかも、身長も伸びている。
「あ、きら……っ」
「うん。北上せんせい」
「あき……っ」
「待たせてごめん」
「……っ」
夜が迫り闇が濃くなりつつある夕暮れ。
1度距離が離れると、北上達はどちらからともなく顔を寄せ合いキスをした。
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