107人が本棚に入れています
本棚に追加
「……せんせい」
秋良の腕に力がこもった。
「ん……?」
返答した北上の声は、誰が聞いても分かるくらいに涙声で。
「好きです」
耳元で。
直後、耳朶に触れる唇の感触と、小さく響いたリップ音。
「……っ!」
北上は自分の体温が瞬時に上がるのを、手に取るように体感した。
言われなくても知っている言葉。
分かっている想い。
でも、一度音にするだけで、こんなにも嬉しいなんて思ってもいなかった。
それに、2年前はっきりと言ったのは自分だけで、秋良からは言われていない。
「うぅ……っ」
嗚咽と共に鼻をすすると、「まだ泣いてるの」と頭を撫でられる始末。
どう考えたって2年で8歳もの歳の差を覆すことなど出来ないのに、これではまるで北上が年下のような扱いだ。
これもきっと、身長のせい。
秋良が、成長期で伸びたせい。
「……秋良、身長何センチ」
「182センチ」
「……大きくなったね」
不貞腐れも通り越して、彼の背中に回した手で拍手を贈る。
出会った当初の1年は自分よりも小柄で線も細く、どこか儚い雰囲気が危うくて心配だった。
たった2年、と言っていいのかは分からないが、心身共に成長したのだと感心した。
「そんなことより」
「え?……わぁ」
突然両肩を掴まれたと思えば押し離され、北上は間抜けな声を上げる。
見下ろしてくる秋良はずっと目を逸らさず、黙っていて。
最初のコメントを投稿しよう!