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中学に進学してからは、その呼び声の後に必ず『将来の夢はなんですか』と問われていた。 何度も、何度も。 マニュアル通りに応えるならば、『僕の将来の夢はこの学園を継ぐことです』だ。 言うたびに吐き気がした。 会うたびに悪寒がした。 気づいたら、彼女のことは大嫌いになっていた。 どうして勝手に決められなければいけないのか。 自分に選ぶ権利がないのか。 最初から与えられた道だけを手順通りに進むなんて、つまらない。 『理事長、秋良はまだ学生です。これからたくさんの出会いや経験をして成長していくのです。僕のようにずっと縛り付けるのではなく、一社会人として外で多くを学んだ上でまた戻ってきてもらうのもいいのでは』 中学3年の、進路選択。 三者面談は当たり前のように、自分と父と理事長だった。 父は初めて、自分の前で彼女に口を開いた。 その背中は普段と見紛うほど、大きかった。 『黙りなさい』 冷ややかな眼差しと、似合わない微笑み。 『秋良。次は貴方がこの学園を継ぐのです。この家に生まれた以上、拒否権はありません』 洗脳か。 または、自分と同じ意志を持つクローンとでも思っているのか。 『……はい』 有無を言わせない圧力に力なく応じ、秋良は祖母が統べる私立丘ノ宮学園高校へ入学した。
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