13.

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*** 昨夜、互いの熱と今まで蓄積され続けていた欲望が溢れ出したように、何度果てても収まらず長い夜を過ごした。 結果、2人とも起きたのは正午辺りで、朝食兼昼食を適当に済ませるとリビングのソファーに腰を下ろした。 情報番組を流し見ながら、北上は秋良に問う。 「話したいことって、何かな」 自分の右手が持つマグカップの中身はブラックコーヒーだ。 覗き込めば真っ黒な自分の顔が映っていて、その瞳は思ったりよりも冷静だった。 秋良の話が自分にとっていいことでも悪いことでも、しっかり受け止め受け入れようと思う。 彼が2年前の口約束を忘れず守り、会いに来てくれたから。 変わらない気持ちだと『好きです』と、その唇で伝えてくれたから。 例え今夜、秋良が帰ってしまっても。 もう二度と会えないとしても。 きっと、しばらくは想いを引きずってしまうだろうけれど。 愛しい秋良の幸せを願う気持ちは、2年前と揺るぎないから__。 「俺の、卒業後の進路について……言いたくて」 「うん」 口を開いた相手の声は思いの外小さくて、北上は自然な手つきでテレビの音量を下げた。 高校2年3年の秋良の姿を、自分は知らない。 ましてや、どんな進路選択をして、それに伴う悩みや葛藤があったのかも。 秋良は成績もいいし、何より理事長の孫だ。 大学に進学する、と言うのはよく聞く話だが、海外留学だと言われても驚かず応援しようと北上は頷いた。 好きだからこそ、大切だからこそ、彼の手は引き止めないし背中を押すことも躊躇わない。 もちろん、我欲がそれを邪魔するけれど。 「俺、北上せんせいのような教師になりたくて」 「うん。……え?」 「でも正直、どの科目も特に興味なくて」 「ちょっと待って、秋」 突然自分の名前が出てきたことに、慌てて話を止めようと声をかける北上。
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