13.

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マグカップを両手に包んだまま左横に座る秋良を覗き込めば、静かに微笑みかけられてカップをテーブルの上へと移された。 そして、代わりにとでも言うように、彼の両手が北上のそれをそっと握る。 「北上せんせい。俺の話、最後まで聞いて?」 甘えるよりも諭すような口調に、大人になったんだなと感心してしまう。 うん、とぎこちなく応えた北上に満足した笑みを浮かべた秋良は、話を再開した。 「ちゃんと考えたんだ。将来のこと……1番叶えたいこと」 「うん……」 秋良の夢は分からない。 想像もできない。 だって、話をしなかったから。 「ずっと北上せんせいと居たいと思った……だから来た。一緒に過ごす為に」 ぎゅ、と手が締めつけられる。 "痛い"と言おうと思った時、それが小刻みに震えていることに北上は気づいた。 「……理事長は父さんも俺も言いなりにして離そうとしないから、その我儘を叶える代わりに俺の願いも叶えさせてもらう」 "言いなりにして離そうとしない"とは、きっと学園を受け継ぐことに関してだろう。 「それが……秋良の進路?」 北上は自然体でいるよう努めた。 「そうだよ。ねぇ、せんせい……俺は、"会いに来た"んじゃ無いからね」 「え……」 「2年前、俺が何て言ったか覚えてる?」 すぐに思い出さなくていいのに。 忘れた、と言えば流れは変わるかもしれないのに。 「"迎えに、行く"……」 北上が答えると、秋良は安心したように目を細めた。 「そう。迎えに来たんだよ、せんせい」 「……っ」
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